ビジネスの観点から申し上げると、今回のような出来事を望んでいた人は誰もいないと言っても過言ではないですし、この状況から前に進む方法を見つけるのも容易ではないでしょう。
今回のコロナウイルスの混乱に対し、現在企業は「危機モード」で運営を行っています。学校閉鎖の延長やイベントの延期、相次ぐ旅行のキャンセルの話題は、時には大きな犠牲を払いながら、コロナウイルスによって人々の生活がいかに台無しにされているか、の例として表されています。
最近のビジネス状況において、これが意味しているのは、CXの指標と測定値、つまり、消費者たちのカスタマーエクスペリエンスを理解し、管理するために通常使用される、エクスペリエンス [X] データとオペレーション [O] データを一時的に適応させる必要があるかもしれない、ということです。
しかし、どのように適応させたらいいのでしょうか?私以外にも多くの意見があるため、実際にカスタマーエクスペリエンスの現場で働く仲間たちに聞いてみました。以下は、危機的状況下におけるCXの測定についての、彼らからのアドバイスと識見です。
危機的状況でカスタマーエクスペリエンス(CX)を測定する:CXの指標や測定、考え方は現在どのように変化しているのか
「サクセス」を定義する
「カスタマーサクセス」などの言葉がありますが、消費者にとっての「サクセス」とはどのようなものであるのか考えてみてください。彼らは何を気にしているのでしょうか?何を必要としているのでしょうか?柔軟性のある対応?それとも特別な顧客対応でしょうか?
そして次に、たとえば、清潔な店舗やクレーム、特別対応の数、応答性、代理店への共感値などの数値を測ってみてください。
また、従業員たちの体験も見落とさないでください。会社のリーダー層からのコミュニケーションや時間の柔軟性など、従業員にとって重要なことが何なのか、きちんと測ってみてください。
– Diane Magers 、Experience Catalysts創設者兼最高経験責任者
コンテキストがすべて
重要な指標というのは、実際に起こった出来事に起因していることもありますが、ほとんどの場合は次の事柄に起因しています。その状況の深刻さや、それが自分にとって何を意味するのか、また、困っている人たちに対して何を[準備・回復・サポート][すべき・すべきでない]か、です。
顧客のニーズに合わせた透明性のあるデータを提供することに重点を置いてください。危機的状況下では、顧客からの信頼がきわめて重要です。
– Marcy Jacobs、McKinsey&Companyアソシエイトパートナー
顧客視点からの指標を選ぶ
危機対応とは、顧客のカスタマージャーニーを修復することが全てなのです。平均修復・解決時間(MTTR)はどうだったのでしょうか?適切なタイミングかつ明確な通知があれば、どのくらいの顧客がコールセンターに電話をかける必要がなかったのでしょうか?セルフサービスがあれば、どのくらいの割合の顧客が自分のカスタマージャーニーを自分で簡単に修正できたのでしょうか?あなたの会社のコールセンターは、1時間で何人の顧客を救うことができるのでしょうか?
– Andrew Gilliam、ICMIアソシエイトアナリスト
質的データが重要
危機的状況下にあるときは、まず最前線にいる従業員のところに行ってください。常に顧客と話している彼らは、最高のデータを持っているでしょう。従業員を通して、顧客の目になってこの危機を理解することができます。また顧客にとって最も重要なことを、しっかりと計画することもできます。
感情分析にテクノロジーを使ってください。運用指標はサービスに関連していることでしょう。つまり、影響を受ける顧客の数、問題の数、問題解決率です。
– Michelle Batt、Speaker & Workshop Facilitatorカスタマーエクスペリエンスリーダー
量的側面がこれまで以上により重要である
危機的状況下において、顧客が最も必要としているのは、早くて、簡単で、ストレスのない体験です。この顧客が必要としているものは、危機時と平常時では違うのでしょうか?いいえ、おそらく同じです。
しかし、以前とは違い、今が正念場なのです。したがって、たとえば普段からコールセンターでの平均応答時間が重要であるならば、それは現在の顧客にとってさらに重要なこととなるのです。
– Michelle Morris、Verizon Businessカスタマーエクスペリエンスデザインパートナー
フレックス
きわめて厳しい時期でも、初回問題解決、努力具合、満足度などの測定はもちろん重要です。しかし、一流企業と呼ばれる会社は、サービスの提供や不満、否定的な感情への対応をすべき時期を知っているのです。
– Alex Russell-Rutherford、Wessex Waterカスタマーエクスペリエンスマネージャー
先行指標vs.遅行指標
先行指標は、組織の意思決定者が問題を見つけて迅速に行動をするのに役立ちます。 CSATやNPSのような遅行指標は、危機が過ぎた後に数字が変化する可能性があるため、あまり役に立ちません。今が先行指標をより重視する時かもしれません。
– Julia Ahlfeldt、Julia Ahlfeldt CX Consulting
信頼が鍵
理想的には、あなたは既に、信頼の指標または顧客が探しているものを見つけられるかどうか、を突きとめている段階にいるのでしょう。
危機が起きたその時に、顧客からの信頼度を調査し始めるべきではありません。なぜなら、顧客は長い間で信頼を築けていない限り、あなたを信頼してはくれないからです。
危機的状況下では、これからの計画は作らないはずです。顧客に関する測定結果を使って、顧客からの信頼を得られる方法で行動をすることが、今のあなたの仕事なのです。
– Adam Korengold、National Institutes of Health、アナリティクスリード
根本原因に固執する
そうしなければならない状況に陥ってしまう前に、顧客が抱える問題の根本原因に関するデータを集め始めてください。問題の根本原因を理解することは、その再発防止のために当然なことです。
– Vince Mirabelli、Workplace Safety&Insurance Board, Ontario, Canada戦略的ソリューション、
根本にある問題の特定に注力すれば、従業員と顧客の関係は、通常時であれ非常時であれ、自然とポジティブなものになります。
– Lynn Hunsaker、ClearAction Continuum最高顧客責任者
顧客と従業員の体験指標のつながり
危機的状況になることによって、カスタマーサポートの電話、メール、チャットが急激に増加する可能性があります。私は以前、1日あたり5,000件の電話を受けるコールセンターで働いていました。しかし吹雪で非常事態となった際は、コールセンターへの電話が1日あたり25,000件に増加したのです。
緊急対策には、顧客と従業員の観点から数値を考慮する必要があります。計画を立てる際は、重い作業負荷と強制的な残業が原因で従業員が疲弊してしまわないようにする必要があります。
– Rosetta Lue、 GovCXP, LLCプリンシパルコンサルタント
ブランド価値を優先する
ある点では、測定と指標は重要でないかもしれません。そういった場合により重要なのは、組織の根幹の方針と価値観に忠実であり続けながら、危機から抜け出す方法をすばやく特定することなのです。危機的状況下では、良質な問いが測定に勝ります。
顧客が危機を乗り越えるために、どのような支援が必要でしょうか?役に立つ製品の流れを維持するために、サプライチェーンの強みを活用するにはどうすればよいでしょうか?状況を悪用する仲介業者からどのように身を守ればよいのでしょうか?
– Yvonne Nomizu、Pacific Consulting Group CEO&マネージングディレクター
現実的であり続ける
周りで起きているパニックを見てみてください。そして、パフォーマンスの低下に対して計画を立ててください。ビジネスの盛衰はよくあることです。今私たちの目の前で起きているような危機は、またすぐにやってくるのです。
実行可能な項目を測定し、実行不可能で、一時的かつ否定的な項目が、カスタマーエクスペリエンス戦略に影響を与えないようにしてください。
– Nate Sylvia、Verb Technologyカスタマーサクセスおよびカスタマーエクスペリエンス担当バイスプレジデント
現在のパンデミックの状況は、顧客と企業に混乱をもたらす可能性があります。そして、混乱は企業のブランドを危険にさらす可能性があります。
現時点でのCXの指標、測定値、考え方を柔軟に適応させることは、顧客の期待に合わせるため、また将来の潜在的な危機に備えるための重要なステップなのです。